ホタル
職場から帰る途上、自転車に乗った親子とすれ違った。すれ違いざま、子供が大きな声を上げた。振り返ると、子供が自転車から飛び降り手をかざしながらフラフラと歩いている。
「ホタルだあ!」
職場の近くには樗谿(おうちだに)公園という公園があって、そこでは長年のボランティアの努力が実り、毎年ホタルが乱舞するようになっている。きっと公園のホタルがこのあたりまでやってきたのだろう。
子供はキャッキャッと騒ぎながらホタルを追っかけていた。ん?オレが子供のころってホタルを見て喜んでいたっけ?ホタルを見て喜ぶなんてことはなかったような気がする。決して感受性が鈍い子供だったわけではなくて、ごくごく当たり前のことだったから。この季節になると、当たり前のようにホタルが舞っていたから。
昔は家の外にはホタルが群舞して、さすがに今では家の周りにはいないけど、それでもほんのちょっと奥に行けば、今でもホタルの群舞が見れる。田舎に住んでて不便だなあと思うことは多々あるが、ひょっとしたら、オレっていい環境に住んでいるのかなあ、とちょっぴり思ったり。で、ホタル一匹であれだけ喜べる子供がかわいそうでもあり、うらやましくもあったり